タイトルの男前のおっさんですが、私のことではありません。
私は海に面した田舎の育ちなのですが、私が田舎で小学生時代に出会った男性のことです。
小学校の夏休み。
僕は友人と自転車で海に泳ぎに行っていました。普段は家の近くのそれほど綺麗ではない海に行っていましたが、その日は自転車で1時間ほどかかる透明度の高い海に泳ぎに行っていました。
防水のバックなんて気の利いたものは持っていなかったので、千円札を1枚ポケットに突っ込んで自転車を立ち漕ぎで海に行きました。
普段ポケットに入れていたのは硬貨だったと思うのですが、その日はたまたま小銭がなく1000円を折りたたんで持って行きました。
海に着くとポケットの紙幣に気を使う余裕などなく、思うままに海で遊びました。
帰り。
流石にびちゃびちゃの紙幣は使えないというのは理解できていたので、同じ道を1時間、紙幣を乾かしながら自転車を漕いで帰りました。
家から自転車で5分ほどの距離にある、離島への渡し船の乗船場に着きました。
その頃には紙幣もカラッカラに乾いており、シワシワながらも乾いていれば使えると思って、自動販売機にシワシワの1000円を投入しました。
自動販売機は私の入れたシワシワの紙幣を受け付けてくれず(べー)っと戻ってきました。
この時、使えないのかなと思ったのですが、何故か2度目を入れてしまいました。
2度目は戻りもせず、紙幣としての認識もされず、紙幣投入口で詰まってしまい、出せなくなりました。
当時私に取っては大金です。
小学生なりの知恵を絞りながら一部見えている紙幣を引っ張ったり、返却レバーをカタカタ何度も捻ったり。試行錯誤を繰り返しました。
結構な時間、自動販売機と格闘していたと思います。
そんな時にタイトルの男前のおっさんが現れたのです。
おっさんは自動販売機の前で泣きそうになっている僕に少し前に私に気がついたようで、僕に声をかけ事情を聞くと、自動販売機の前に立ち、紙幣を引っ張ったり、返却レバーを捻ったりという動作を10秒くらいやったかと思うと
自分の財布から1000円を取り出し私にくれたのです。少し戸惑う私に
「この自動販売機の管理者は俺の知り合い、後で出しておくからこれを持っていけ」と言ってくれました。
当時は何も思いませんでしたが、今思えば多分嘘だよなと思います。
出張帰りのほろ酔いのおっさんが、新幹線に揺られながら昔あった男前のおっさんのことを思い出しました。
あんなかっこいいおっさんになりたいと思うアラフォー。
✳︎写真は出張先で撮影した写真 本話とは無関係